作成日:2026.09.01
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グリッドコード/連系要件
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※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
【2028年4月適用案】特高蓄電池、発注前にここを確認!PCS選びに関わる2つの変更点
〜事故時の動作を左右する「FRT要件」、何が変わる?〜
電力広域的運営推進機関、通称OCCTOは、2026年8月21日の第22回グリッドコード検討会で、特別高圧に連系する設備の「FRT要件見直し」を審議しました。FRTとは、送電線事故などで電圧や周波数が一時的に乱れても、PCSが必要以上に停止・解列しないための技術要件です。PCSは、蓄電池の直流電力と電力系統の交流電力を相互に変換する装置で、BESSの充放電や事故時の動作を左右します。今回の主な変更点は、「周波数変化率を300ms以上の時間幅で判定すること」と、「一定の電圧・位相変動でもPCSを解列させないこと」の2つです。ただし、2028年4月は適用予定であり、施行済みの確定ルールではありません。本記事では、何が示され、誰に影響し、発注前に何を確認すべきかを整理します。
CONTENTS目次
要点まとめ(まずここだけ3行)
・特高に連系する蓄電設備について、2028年4月からFRT要件を強化する案が示されました。
・主な変更は、「周波数変化率を300ms以上で判定」と「一定の電圧・位相変動でも解列させない」の2つです。
・正式な規程改定、適用判定日、試験方法は未確定のため、2027〜2028年に連系する案件はPCS発注前の確認が重要です。
同日の別議題と混同しない

2-1. 本記事の対象はFRT要件
第22回グリッドコード検討会では、次の2つの議題が審議されました。
・特高設備のFRT要件見直し
・LFC・EDC・LFSMなどの周波数制御機能に関する要件
本記事で扱うのは、1つ目のFRT要件です。グリッドコードとは、発電所や蓄電所など、電力系統へ接続する設備が守る技術ルールです。今回のFRT見直しは、需給調整市場への参加条件ではなく、事故時にPCSがどのように動くかを定める連系要件です。
2-2. 「2MW以上」は別議題の条件
同じ検討会で扱われたLFC・EDC・LFSMの案では、特高に連系する2MW以上の蓄電設備などが対象として整理されています。一方、FRTについては、特高に連系する蓄電設備を容量によらず対象とする案です。したがって、「2MW未満だからFRT強化の対象外」とは判断できません。同日に審議された2つの技術要件を混同しないことが重要です。
なぜFRT要件を見直すのか
3-1. FRTは事故時に不要な解列を防ぐ要件
FRTは「Fault Ride Through」の略で、日本語では「事故時運転継続要件」と呼ばれます。送電線事故が起きると、系統の電圧、周波数、位相が短時間で大きく変化します。位相とは、交流電気の波のタイミングを角度で表したものです。PCSを使う太陽光発電、風力発電、蓄電設備が増えるなか、複数のPCSが同じ事故を異常と判断し、一斉に系統から切り離されることが問題になります。多数の設備が同時に停止すれば、供給力が急減して周波数がさらに低下し、負荷制限やエリア間の分離につながるおそれがあります。OCCTOは、このような不要な一斉停止を抑えるため、まず特高系統からFRT要件を見直す方向を示しています。なお、FRTは非常用電源、自立運転、ブラックスタートとは別の機能です。停電した地域へ電気を供給する要件ではなく、短時間の系統事故で不要に解列しないための要件です。
3-2. 参考試算はBESS単独の予測ではない
OCCTOは、2050年の中西6エリアを想定したシミュレーションで、周波数変化率の判定時間を変えた場合の停止量を試算しています。周波数変動による再エネ電源停止量は、100msで判定した場合の2,789万kWに対し、300ms以上で判定した場合は52万kWとなりました。位相変動についても、現行要件で1,425万kW、対策後は446万kWという参考試算が示されています。ただし、これらは次の条件に基づく試算です。
・2050年の特定の系統断面を使用
・特定の地域間連系線事故を想定
・BESSだけでなく再エネ電源全体が対象
・実際の停止量を予測した数字ではない
・位相変動の試算は全電圧階級での対策を含む
したがって、「特高BESSだけの対策で停止量が2,789万kWから52万kWになる」という意味ではありません。参考試算から読み取れるのは、判定方法を見直すことで、事故時の不要な停止を大きく減らせる可能性があるという点です。
PCS選びに関わる2つの変更点

4-1. 周波数変化率は300ms以上で判定
1つ目は、周波数変化率の判定方法です。周波数変化率はRoCoFと呼ばれ、周波数が1秒間にどの程度変化するかを示します。単位はHz/sです。現行要件では、ランプ状の±2Hz/sの周波数変動に対し、連系運転を維持することが求められています。一方、周波数変化率をどの程度の時間幅で計算するかは明確ではありませんでした。事故直後は電圧波形が大きく乱れます。PCSが極めて短い時間だけを見て判断すると、実際の系統周波数が大きく変化していなくても、急激な周波数変動が起きたと誤認する可能性があります。そこで今回の案では、「系統から見て300ms以上の時間で算定した周波数変化率が、±2Hz/s以内であれば運転を継続する」という条件が示されました。
重要なのは、300msがPCSの応答期限ではないことです。周波数変化率を計算するための時間幅であり、「0.3秒以内に出力を変える」という要件ではありません。また、±2Hz/sという基準値自体を変更する案でもありません。事故直後の瞬間的な波形の乱れによる誤停止を抑えるための見直しです。
4-2. 残電圧20%以上52%未満でも一定条件では解列不可
2つ目は、電圧と位相が同時に変化したときのPCS動作です。残電圧とは、事故中に残っている電圧を、通常時の電圧に対する割合で示したものです。通常時を100%とすると、残電圧20%は電圧が通常時の5分の1まで低下した状態です。今回の資料案では、三相短絡などの平衡事故時に、次の条件でもPCSを解列させない方向が示されました。
・位相変化:41度以下
・残電圧:20%以上52%未満
・事故継続時間:0.3秒以下
・事故中の動作:運転継続またはゲートブロック
・電圧復帰後:1.0秒以内に事故前出力の80%以上まで復帰
解列とは、遮断器などを開き、設備を電力系統から切り離すことです。ゲートブロックとは、PCS内部の半導体スイッチングと出力を一時的に止めながら、遮断器を開いて系統から完全に切り離すことは避ける動作です。ここは誤解されやすいポイントです。今回の案は、事故中も蓄電池が事故前と同じ出力で放電し続けることを求めるものではありません。ゲートブロックによる一時的な出力停止は認めつつ、まず解列を防ぎ、電圧復帰後に速やかに出力を戻す段階的な要件です。
誰に影響するのか

5-1. 特高に連系する蓄電設備は全容量を対象とする案
第22回検討会の資料4では、特別高圧に連系する蓄電設備について、定格出力や蓄電容量による除外を設けず、全容量を対象とする案が示されています。つまり、FRT要件の対象を判断するときは、設備が2MW以上かどうかではなく、特別高圧に連系する設備かどうかが基本になります。なお、これは第22回検討会で審議された要件案です。正式な対象範囲は、今後の規程改定を確認する必要があります。
5-2. みなし連系・35kV以下の配電線扱い・高低圧は切り分ける
資料案では、次の設備について、今回の強化要件ではなく、現行のFRT要件を引き続き適用する方向が示されています。
・下位の電圧連系区分の要件に準拠する「みなし連系」
・35kV以下で一般送配電事業者が配電線扱いとする電線路への連系
・高圧または低圧に連系する設備
このため、22kVや33kVで連系する案件は、電圧の数字だけで判断できません。一般送配電事業者が特高連系と配電線扱いのどちらに区分するかを確認する必要があります。また、高圧6.6kVで連系する1,990kW級BESSは、出力が2MWに近くても、今回の特高向けFRT案の直接対象ではありません。高圧・低圧については、単独運転検出機能との整合などが課題となるため、引き続き検討する方向です。
何が決まり、何がまだ未定なのか

6-1. 2028年4月は適用予定であり施行済みではない
第22回検討会の資料では、適用時期を2028年4月予定としています。ただし、これは検討会で審議された要件案です。2026年8月28日時点では、正式な規程改定や施行済みルールとして公表されたものではありません。第22回検討会は開催済みで、資料も公開されていますが、同日時点では議事録は未掲載です。OCCTOは、議事録掲載までの間、当日の録画を公開しています。
6-2. 既設設備への一律遡及はしない案
今回の案では、既設設備へ一律に遡及適用する方向は示されていません。そのため、2028年4月になった時点で、運転中のすべての特高BESSへ一斉にPCS交換や改修を求める内容ではありません。一方、既設設備についても、PCSの劣化更新などに合わせて、新しいFRT要件へ順次対応させることが望ましいと整理されています。つまり、「既設への一律遡及なし」は、「既設設備が将来も新要件と無関係」という意味ではありません。PCS更新を予定する案件では、更新時点の適用要件を確認する必要があります。
6-3. 適用判定日と試験方法は今後の確認事項
現時点の公開資料では、2028年4月の前後をどの日付で判定するかは明確になっていません。たとえば、次のどれを基準日とするかで、対象案件が変わる可能性があります。
・接続検討申込日
・契約申込日
・申込受付日
・接続契約日
・連系開始日
また、次の事項も確定情報としては確認できません。
・PCS単体試験と蓄電所全体試験の使い分け
・シミュレーションやHILS試験の扱い
・提出する試験成績書の様式
・基板交換やファームウェア更新時の扱い
・充電中のBESSにおける出力復帰の評価方法
したがって、2028年4月より前に申込み済みの案件でも、「対象外」と自己判断するのは避けるべきです。
発注前に確認すべき実務項目

以下は、OCCTO資料に記載された提出義務ではなく、BESS NEWSが一次資料から整理した実務上の確認事項です。
7-1. PCSメーカーへ確認する4点
1. 対象型式が新しいFRT要件案へ対応できるか
「日本向けFRT対応済み」という回答だけでなく、対象型式とソフトウェアの版を確認します。
2. 300ms以上の時間幅でRoCoFを判定できるか
パラメーター変更だけで対応できるのか、ファームウェアや制御基板の変更が必要なのかも確認します。
3. 一定の電圧・位相変動で解列せず、出力復帰できるか
位相変化41度以下、残電圧20%以上52%未満、事故継続時間0.3秒以下という条件への対応可否を確認します。
4. 適合性を説明する資料を提出できるか
試験成績書、シミュレーション結果、適合宣言書、対応型式一覧など、一般送配電事業者へ説明できる資料の有無を確認します。
7-2. EPC・一般送配電事業者・契約で確認する3点
1. 案件の連系区分
特高連系、みなし連系、35kV以下の配電線扱いのどれに該当するかを確認します。
2. 新旧要件の適用判定時点
接続検討申込日、契約申込日、連系開始日など、どの時点で新旧要件を区分する予定かを確認します。
3. 追加対応の責任分担
正式な要件確定後に仕様変更が必要となった場合に備え、次の費用と責任を契約で整理します。
・ソフトウェア改修
・機器交換
・工場試験・現地試験
・一般送配電事業者との協議
・追加費用
・納期変更
・連系遅延
FRT対応は、直接的に市場収入を増やす機能ではありません。投資判断では、追加対応費用だけでなく、未対応による再設計、再試験、機器交換、連系遅延の損失をどこまで回避できるかで評価する必要があります。また、PCSメーカーが示す1台当たりの追加費用と、蓄電所全体の追加EPC費用は同じではありません。試験、通信、保護装置、現地調整まで含めて確認することが重要です。
よくある誤解(Q&A)
Q
300ms以内にPCSが出力を変える要件ですか。
A: 違います。300msは、周波数変化率を計算する時間幅です。PCSの応答期限ではありません。
Q
事故中も蓄電池は同じ出力で放電し続ける必要がありますか。
A: 今回の案では、ゲートブロックによる一時的な出力停止が認められています。まず解列を防ぎ、電圧復帰後に出力を戻す段階です。
Q
2MW未満の特高BESSは対象外ですか。
A: 資料案では、特高に連系する蓄電設備は容量を問わず対象です。「2MW以上」は同じ検討会で扱われた別の技術要件の条件です。
Q
高圧1,990kWのBESSも対象ですか。
A: 高圧連系であれば、今回の特高向けFRT案の直接対象ではありません。判断基準は出力ではなく連系電圧区分です。
Q
既設BESSは2028年4月までに改修が必要ですか。
A: 既設設備へ一律に遡及する案ではありません。ただし、PCSの劣化更新などに合わせて順次対応する方向が示されています。
Q
2028年4月からの適用は正式決定済みですか。
A: 正式な施行済みルールではありません。第22回検討会で審議された要件案であり、今後の規程改定や経過措置を確認する必要があります。
出典(一次情報のみ)
電力広域的運営推進機関「第22回グリッドコード検討会」
https://www.occto.or.jp/iinkai/gridcode/22.html
会合日:2026-08-21、更新日:2026-08-21、参照日:2026-08-28
電力広域的運営推進機関「第22回グリッドコード検討会 資料3 第22回検討会の位置づけと資料内容」
https://www.occto.or.jp/assets/iinkai/gridcode/22/gridcode_22_03.pdf
資料日:2026-08-21、参照日:2026-08-28
電力広域的運営推進機関「第22回グリッドコード検討会 資料4 個別技術要件検討『FRT要件見直し(特高)』」
https://www.occto.or.jp/assets/iinkai/gridcode/22/gridcode_22_04.pdf
資料日:2026-08-21、参照日:2026-08-28
電力広域的運営推進機関「第21回グリッドコード検討会 資料6 個別技術要件検討『FRT要件見直し』」
https://www.occto.or.jp/assets/iinkai/gridcode/21/gridcode_21_06.pdf
資料日:2026-03-31、参照日:2026-08-28
電力広域的運営推進機関「第117回調整力及び需給バランス評価等に関する委員会 資料3」
https://www.occto.or.jp/assets/iinkai/chousei_jukyu/117/chousei_117_03.pdf
資料日:2026-03-16、参照日:2026-08-28
監修者
青栁 福雄
Aoyagi fukuo
Energy Link 取締役 COO
系統運用・需要側制御・スマートグリッド分野の実務家。東京電力にて変電所の建設・運用・保守および大口顧客向けエネルギーソリューションに従事。マイエナジー出向時には2002年日韓ワールドカップの複数会場および国際放送センターの電源責任を担当。東光高岳では執行役員としてスマートグリッド事業を統括し、NEDO事業等に参画。2019年にEnergy Linkを創業し、分散型電源の導入・利活用を推進。
安心して選ぶためのJC-STAR★1
〜BESS関連製品53件を登録番号付きで公開〜BMS/PCS/EMS/ESS関連の★1適合ラベル取得製品(当社再照合:2026-04-17、IPA製品リスト最終更新:2026-04-15)
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